人気ブログランキング |
ブログトップ

石触徘徊人+g

gecko2005.exblog.jp

瑞牆山の情報など(石と言葉と微かな光)

平和のシンボルとはいえ-2

v.sハト

ずいぶん昔の話しだが恨みは昨日の事のように。

田舎の駅。通勤時の慌ただしさもすぎて時間もゆっくりと感じる頃。
駅のホームで電車を待つ間、ベンチに座りアンパンを食べる事とした。
アンパンを一口かじる前からハト達は足元に集まり始めた。
その数半端ではなく、ホームからあふれんばかり。
単純な欲求に満ちた群衆を思わせる目が規則正しく前後に揺れながら
ku-ku-ku-ku-ku-と鳴きながら迫ってくる。
まるで、あるはずもない権利を迫るシュプレヒコールのよう。
ku-ku-ku-ku-ku-

諸君!
この私は君たちの雇い主でもなければ王様でもないんだよ!

パンを一口かじる。
ku-ku-ku-ku-!

群衆の声はさらに高まる。

パンがほしければ働きなさい!

さらに一口。
ku-ku-ku-ku-!!

でも君たちに出来る事はあるのかい?

足で群がる群衆を払いのけながら、ゆっくり咀嚼。

その時であった。

うしろ肩口から一羽のハトが不意をついてアンパンに蹴りを入れたのだ!
不覚にも手からアンパンは離れ落ち、コロコロと餓えた群衆の真っただ中へ!
群衆が一つの意志を持った固まりとなりアンパンを中心とした狂気の円が出来た。

虚しく伸ばした手を戻すと、ベンチに深く沈み込む裸の王様。



電車はまだ来ない。

群衆が全てを食べ尽くすのをただ見守るのみ。

↓イメージ
e0010166_2202273.gif


シートン動物記の伝書鳩の物語『アルノーある伝書鳩の生涯』は
動物の英雄たちという巻に納められている。
アルノーは伝書鳩として数々の記録を作った鳩だったらしい。
シートンはこの鳩の栄光の歴史を、その生涯がハヤブサに襲われて終えるまでを
実にうまく愛情を持った視点で書いている。
しかし伝書鳩としての能力などハト達にとっての英雄とは別の話し。
やつらにとって真の英雄とは、餓えた群衆のために傲慢な暴君と戦い
糧を得る事が出来る者の事ではなかろうか?

アンパンに蹴りを入れたハト。
あいつは確かに真の英雄だったろう。
でもやつらはその英雄を語り継ぐ事はないだろうし
アンパンマンの犠牲愛に満ちた話しも理解出来ない。

その日私は朝食を失った。

そしてハトが少しキライになった。
by gecko-2005 | 2010-05-31 22:30 | 僕らはみんな生きている